・題目:「J-PARCでの中性子寿命測定と中性子基礎物理学研究」
・講師:猪野 隆 氏(高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所)
・日時:12/14(火):16:00-17:30
・場所:E211
・概要
中性子の寿命は、弱い相互作用の結合定数および小林-益川行列の要素 と直接結びついている。また、ビッグバン初期の軽元素合成においても中性子の寿命は主要なパラメータとなっており、中性子寿命の測定研究は重要な物理的意義を持つ。一方、測定手法によって中性子寿命の値が異なっているかのように見える「中性子寿命問題」が現在持ち上がっている。これは、(1)超冷中性子を容器内に閉じ込め、その減少数から寿命を求める手法と(2)中性子の崩壊粒子を捉えて崩壊割合から寿命を求める手法とで、測定される中性子寿命が系統的に異なっている「問題」である。J-PARCでは、後者の中性子崩壊による電子を捉えて中性子の寿命を測定する研究が進められており、この実験と現状について紹介する。また、同じくJ-PARCで進められている低エネルギー中性子を用いた基礎物理学研究の中から、時間反転対称性の破れ探索実験および中性子と原子核との散乱による余剰次元(未知相互作用)の探索実験についても紹介したい。