NITEP・数理・素粒子合同セミナー

ブラックホールの情報パラドクスと量子情報 --量子カオス系の量子誤り訂正--

Asia/Tokyo
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Description

日時 : 2022年7月4日(月) 9:00~
講演者 : 中田 芳史 氏(東京大)
題目 : ブラックホールの情報パラドクスと量子情報 --量子カオス系の量子誤り訂正-- 
場所:Zoom

概要 :
ブラックホールの情報パラドクスは素粒子物理学における長年の未解決問題である。近年、ホログラフィ原理の理解が進むにつれて、量子情報の手法を用いたより精密な解析がなされるようになった。そのきっかけがHayden-Preskill模型[1]と呼ばれる量子情報的な玩具模型であり、様々な仮定(特に、量子ブラックホールは量子力学的に記述され、かつ、そのユニタリ時間発展は十分量子カオス的という仮定)の下で、量子ブラックホール内の量子情報は少量のホーキング放射から復元できることが示唆された。その導出の肝が、「量子カオス的なダイナミクスが誘起する量子誤り訂正」である。本セミナーでは、Hayden-Preskill模型を舞台として、量子カオスと量子誤り訂正の関係を概観し、その後、系の対称性による影響[2]や、放射から量子情報を復元する具体的な手法[3]、量子カオスと情報スクランブリングの関係[4]について説明したい。本セミナーのほとんどは量子情報的な模型に基づくものだが、最後に、量子ブラックホールとの繋がり等について意見交換できれば幸いと考えている。

[1] P.Hayden and J. Preskill, JHEP 2007:120.

[2] Y. Nakata, E. Wakakuwa, and M. Koashi, arXiv:2007.00895 (2020).

[3] Y. Nakata, T. Matsuura, and M. Koashi, in preparation.

[4] Y. Nakata and M. Tezuka, in preparation.