NITEP・数理・素粒子合同セミナー

量子性とは何だろう

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Description

日時 : 2023年5月29日(月) 9:00~
講演者 : 谷村省吾氏(名古屋大学)
題目 : 量子性とは何だろう

アブストラクト:物理学者にとって量子力学と古典力学の違いは重要だと思われますが、何をもって量子的と言うのでしょうか? 量子性(quantumness)とは、エネルギーが飛び飛びの離散的な値をとることでしょうか? 確率的な振る舞いのことでしょうか? 重ね合わせ状態でしょうか? 干渉効果でしょうか? 不確定性関係でしょうか? 摂動論のループ積分のことでしょうか? 量子論にはさまざまな特徴がありますが、ここでは、文脈依存性(contextuality)と呼ばれる特徴を解説したいと思います。文脈依存性は「物理量の値の実在性が、物理量を測るやり方に依存する」という奇妙な性質であり、量子力学的物理量が非可換演算子であることに起因します。ベルの不等式は「測定方法に依存しない物理量の値が実在する」という仮定から導かれる不等式ですが、量子論はベルの不等式が破れうることを示唆します。2022年のノーベル物理学賞は、ベルの不等式の破れを実験実証した3人の物理学者に贈られました。その問題設定と発見の意義を解説したいと思います。
参考資料:https://www.phys.cs.i.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/NobelPhys2022/overview.html